アマチュアの涙  2008年9月5日公開

落語についての本を読みます。 CD、DVDもよく観ます。
ひとつの演目を演る前に、色々な落語家の演じ方を出来る限り広範囲に観聞きし、研究します。
その上で自分なりの演じ方を見つけ出します。
不思議なもので、それはある日突然口から出てきますので、それをそのまま録音します。
それを文字に起こして、覚えます。

湧楽座前の畑   by 加門

しかしこれがなかなかその通りには覚えられない。 
── 「それで ── ?」
落語は2008年正月3日が初舞台。
落語については何も知らないも同然。
知らないとは恐ろしいもので、そのまま調子に乗って
6月12日(木)札幌時計台ホールでの「独演会」となった。
リスクを恐れない若さがまだあるのか。

そんでもって少しでも落語の世界を知ろうと、本を読んだ。
立川談志「現代落語論」の1と2、六代目円生「寄席育ち」、桂米朝「落語と私」、
春風亭小朝「言葉の嵐」、「苦悩する落語」
立川談四楼「寿限無のささやき」小沢昭一「寄席の世界」、柳家権太楼「大落語論」、柳家小三治「落語家論」
立川談春「赤めだか」、江国滋「落語手帖」 大西信行「落語無頼語録」、秋山真志「寄席の人たち」
芸道物として、マルセ太郎「まるまる一冊マルセ太郎」 世阿弥「風姿花伝」
そして我が師匠 小沢昭一の ”花”シリーズ・・ 等々 ・・・。

「おぅおぅ、それじゃ落語についてずい分解った様だねェ」 「この世界の事をずい分、お知りになりましたね」
「ハイ、お蔭様で・・・ とても勉強になりました。」
「ヘェ~、色んな落語家のCDやらDVDもかなり観て研究してるんだね、あ~た」
「ハイ、お蔭様で皆さんのやる様に少しは近づけた様な気がします。お蔭様で・・・」
「ホー、そりゃ良かったじゃないの。俺たちプロも顔負けだね。なァ~皆んな~。」
「本当だ、ホントだ──。」
「イヤ~そんな事ないっすヨ! まだまだ勉強不足ですヨ、足元にも及びませんよ。」
「ホー、そんであんた、足元に及んでどうしたいの? え? 何がしたいの??」
「はい、何とか皆さんから少しでも良い評価を頂きたいと・・・ハイ。」
「フーン。そんなの訳ないヨ。いくらでもホメテあげますヨ。え~ いくらでも。
実際いいんじゃないの、 いい線いってると思うよ。」
「ハイ、そうですか、ありがとうございます。」
「こんなもんでいいかい。」
「ハイ」

「あ、そうかい。 そいじゃ俺たち次の高座も仕事も待ってるからサ、そろそろ行くわ──。
じゃ、元気でね、がんばってね~~! ありがとう、バイバーイ」
「ハイ、皆さんもお元気でさようなら、 又来て下さ~い。」
「おう~~、金積んで呼んでくれたらいつでも来るヨ~。 又呼んでね~~」
「ハ~イ そうします。 じゃどうもありがとうございましたァ」

 話しはそれでお終い。 翌日からの何も変わらぬ日常・・・。

湧楽座前の畑   by 加門


この田舎暮らしからは一歩も動けず・・・。
落語家さんたちは自分たちのフィールドに戻り、
益々芸に磨きをかけてゆく・・・。
「それがどうした? それがどうしたの? え??」
「あんた、泣いてんのね」  「だから言ったじゃないのサ~」
解りました ・・・・・。

落語家は来世で目指す事にいたしまして、
こで私は日々を重ねてゆきます。
それ以外に道なし・・・。

そしたらここで一丁、存分にやっちゃるべゃ───!!!

加門 54才。

やや淋しげに塩作る工場へと、消えていったのでございます・・・ 終わり。