湧楽座の今日まで そして 明日から 2007月12月5日公開
いや~~、早いもので
湧楽座の開座(2006.4.20オープン)よりすでに1年半が過ぎてしまいました。
そのときからこの通信を始めようと準備していたのでございますが、
しかし、開座以来思いもよらぬ事態となり、このコーナーに手をつける事がまったくできませんでした。
早い話が、思ったようにお客様に来ていただけなかったということです。
いや~~、ビックリでございました。
この館の経営主体は、場内見学とラーメン店へのご来場でございます。
私としては相当に宣伝を掛けたつもりではおりましたし、
何より建物の造りにはかなりの思い入れをこめて自信もございました。
従って、きっと大きな反響がある、と確信していたのでございます。
ところが、ところが ・・・・・
─ア~ お客様が来ないのです……全然。
オープン当初はともかく…… それからが……ウゥゥ…─…
経営者として数千万円もかけた事業が動きません。 わずかに息をしているといった状態。
お客様からは
「え!個人経営ですか……。 どうぞがんばってください」
「いい道楽ですね~~」
道楽じゃないんですがね~~。
そんなある日、ある方から
「同じようにやっている夕張のシネマの館とか何とかいう建物があるから行ってみたら……参考までに……」
それで急ぎ出かけてゆきました……。
その方は言葉にせず、私を傷つけぬ様に、選んだ道の誤りを教えたかったのだと思います。
そこで見たものは……。
私どもよりはるかに大きな立派な規模で、そりゃそうでしょう。
夕張国際映画祭を行っている自治体ですから── しかし、何と、お客はほとんど私一人……。
驚きの実態!! 時は8月の初旬、金曜日の午後1時30分、それでこの有様……。 背筋がスーッと寒くなりました。
ここには専門のスタッフが4人もいて、お客様の誘致に全国を奔走しているというのに、これか──!! ガーン!!
そして古い建物が売りの、夕張の鹿鳴館と言われている旧炭鉱会社の迎賓館を訪ねました。
やはり誰も居ず、声をあげるとやがて管理人の方が出てきて慌てて場内の灯りをつけました。
こりゃウチと同じだ……。
来場者名簿を見れば一日3~5人、多くて10人の名前がありました。
ウチとおんなじだ……。
もう決定的です。絶望感が漂います……。 アア……。
暗い思いで札幌へと足をのばし、旅行会社を訪ねる。
話を聞けば観光バスを回すにはお金がかかるとの答え。
そりゃそうでしょう~~。 黙ってて、バスが来るようなことはないのでしょうね~。
夜遅く家へたどり着き、テレビをつけると古い映画が放映されていました。
「タイタニック」という題で……。
ご存知のとおりその豪華客船は不沈船といわれていたが、船は処女航海で沈んだのです。
アア~~~ いやなものを観てしまったァ────
一睡もできぬまま夜が明けました……。 チチチチとスズメの声。 絶望感はピークに達していました。
「何かせねば。なにか───」
そう考えた私はゆうらく軒のスタッフに雇い入れた新卒の若い女性スタッフを交え
湧楽座の舞台で一座を作りショーをやろうと提案・・・
「フラガール」そのもの・・・
しかし会話の中で無言のうちに泣き出してしまったスタッフ・・・ どうにもうまく行きそうにありません・・・。
その日、絶望のふちにいる私に声をかけた女性ベテランスタッフがおりました。
「社長、大丈夫ですヨ ! 考えてもみてください、建物は立派だしラーメンの味だっていいのだから・・・
しかしここはまだ産まれたばかりの赤ちゃんですよ。
それなのに早く歩け、早く稼げといってはかわいそうです。
自信を持ってゆっくり見守ってあげましょう・・」
「それじゃ経営は成り立たないんだヨ。 会社はつぶれるヨ! 君ィ─!・・」
その夜、そしてずーと考えました。
そして私は決断しました
この湧楽座は私の、我が家の、記念館なのだ。
わがご先祖の魂のよりどころなのだ。 それができたことにまずは感謝しよう。 いや大いに喜ぼうではないか。
もしだめになるならそれもいとわない。 自分で選んだ道だから。
そしてあの彼女が言うとおりだと・・・何せこの子はまだ赤ん坊だと…
ゆっくりとこの湧楽座の成長を見守ってやろう。
手をかけ暇をかけ、何より、たとえ一人でも
わざわざこの奥まったこの町の店まで車を走らせ来て下さるお客様がいるということを・・・
その腹が決まったのが12月の末日・・・・経営はしない、これは我の豪華な別荘だ──!
すると不思議なもので冬期間(1月~4月まで)は休業と考えていたのに、
このころから客足が少しずつ増えてきたのです。
結局正月三日の新春興行を無事盛況のうちに行ない、
そのまま春までそして今日まで続いています。 何とか…
十分に満足とはいえませんが、リピートのお客様も増え、
開業時の2倍3倍のお客様が毎日来ていただけるようになりました。
経営的にも少しは助けとなる収入をいただけるようにもなりました。
そんな思いで今、この通信レポートを書いています。
まだまだ気を抜けませんし、十分ではありませんが
時間をかけ時を重ねる年輪のようにこの「湧楽座」をいとおしみ、積み上げてゆこうと思います。
こうして来年の正月三日も第2回目の湧楽座新春興行を行う運びとなりました。
いろいろあった一年半を振り返れば懐かしささえ漂います。
オープンより現在までの入場者数 1万3401人
次回はみなみかわ加門誕生の話をお送りいたします。 乞うご期待の程を…